「からす座の物語」
2023年4月30日22時頃の南東のさいたま市の星空
2023年の4月末の南の夜空には月齢10の月がしし座にあります。
しし座の2等星デネボラ、うしかい座の1等星アークトゥルス、おとめ座の1等星スピカを結ぶと春の大三角ですね。
今回は「カラス座」の見つけ方とその星物語をご紹介します。
北斗七星の柄杓の柄の先からおとめ座の1等星スピカまで続くカーブを春の大曲線と言います。
そして、そのカーブの南、少し地平線に寄ったあたりを、まるで、そのカーブの延長のように先へと
長く伸びている星座がウミヘビ座。そのウミヘビの背中にカラス座とコップ座が乗っています。
カラス座は4つの3等星が四角形を作っていて、とくに明るい星はありませんが結構見つけやすい星座です。
そしてこのカラスは、太陽神アポロンに仕えるカラスだったと言うことです。
では、その「カラス座の物語」をご紹介します。
アポロンはテッサリアの王女コロニスを深く愛して、やがてコロニスはアポロンの子を身ごもりました。
アポロンはコロニスとずっと一緒にいたいのですが、人間であるコロニスは天の世界には行けず、
太陽神であるアポロンは、毎日、朝には東から駆け上がり、夕方には西へと駆けていかなければならないので、
地上でゆっくり暮らすことはできません。
そこでアポロンは、羽根が雪のように白くて、人間の言葉を話すことができるこのカラスを連絡係にして、
1日に1回二人の間を往復させ、互いにその日の出来事などを伝え合うことにしました。
ところがある日、カラスはコロニスの所へ向かう途中、道端においしそうな木の実を見つけて、
これを食べるのに夢中になってしまい、気が付くとずいぶん時間が経ってしまっています。
あわてたカラスは、大急ぎでコロニスのもとへと飛んでいきました。着いてみると、一人の青年がコロニスと
一緒にいました。急いでいたカラスは、コロニスに告げることだけを告げて、アポロンのもとへと飛んで帰りました。
が、それでも遅れてしまい、何で遅くなったのだと聞かれて、道草を食っていたとは言えず、
困ったカラスはアポロンの気をそらそうと、「コロニスは若い男と親しげに話していましたよ。
彼女の心はその男に移ってしまったようでしたよ。」と、まるでコロニスが浮気をしていたかのように、
アポロンに伝えました。
怒ったアポロンは、弓矢を掴むと急いで地上に降りていき、コロニスの屋敷から出てきた人影を、
彼女の浮気相手と思いこんで、ただちに矢を放ちました。ところが、近寄ってみると、
アポロンが射抜いたその人影は、アポロンを出迎えように出てきた、愛するコロニスその人だったのです。
アポロンは、コロニスと一緒にいた青年が彼女の兄であったことを知り、深く後悔しましたが、
コロニスは「お腹にいる子を無事に育ててください。」とアポロンに言い残して、こと切れてしまいました。
アポロンは、この嘘つきのカラスから、人の言葉を話す力を取り上げ、白い羽根も真っ黒に変えて、
天空に晒しました。
アポロンはまた、コロニスのお腹から取り出した赤ちゃんを、ケンタウルスの賢人ケイロンに預けて、
育てさせました。コロニスとアポロンの間にできたこの子は、アスクレピオスと言って、後に、
医術の神様になります。
では、今回の星物語はここまでです。
著:Shiba
(c)さいたまプラネタリウムクリエイト 2023