「かんむり座の物語」
2023年5月31日22時頃の南のさいたま市の星空
2023年の5月末の南の夜空には月齢12の月がおとめ座にあります。
今回は、うしかい座の東にある半円形の星の並び、かんむり座の物語をご紹介します。
北斗七星の柄杓の柄のカーブを延長した先に、オレンジ色の1等星アークトゥルスがあります。
この星を結び目とするネクタイの形をした星座がうしかい座。そのうしかいの棍棒を持つ腕の東に、
かんむり座があります。
かんむり座は、明るい星は2等星が1つだけで、その他は4等星以下という小さな星座ですが、
その半円形は目につきやすく、日本では太鼓星とか首飾り星などと呼ばれてきました。
では、この「かんむり座の物語」です。
その昔、クレタ島のミノス王は、毎年、属国アテネから美しい少年少女を7人ずつ献上させ、
王宮地下の巨大な迷宮に閉じ込めた牡牛の怪物ミノタウロスに、生贄として捧げていました。
アテネの王子テセウスは、この残酷な生贄をやめさせようと、みずから生贄の一人となってクレタ島に
乗り込み、ミノタウロスを退治しようとしました。
しかし、ミノタウロスが住む迷宮は、一度足を踏み入れたら二度と出てくることが出来ないという迷宮です。
たとえミノタウロスを退治したとしても、生きて再び外へ戻ることは難しいのです。
このときミノス王の娘アリアドネが、迷宮に送り込まれようとするテセウスに、魔法の糸玉を手渡し、
その糸の端を迷宮の入り口に結び付け、ミノタウロスを退治したらその糸を辿って入り口に戻ってくればよいと伝えたのです。
アリアドネは、生贄としてやってきたテセウスに一目で恋をし、何とか彼を助けたいと思ったのです。
テセウスはそんなアリアドネの思いに感謝し、無事に戻ることができたら彼女をアテネに連れて帰ると
約束して、ミノタウロスの元へと向かいました。
やがて、ミノタウロスを退治し、無事迷宮を抜け出したテセウスは、アリアドネを連れてアテネに向け
船出しました。ところが、途中立ち寄った島で、テセウスの夢に女神アテナが現れ、「アリアドネはアテネに
不幸をもたらす。彼女を島に残し、急いで船出せよ。」と告げたのです。やむなくテセウスは、彼女が
寝ている間に船出してしまいました。
目を覚ましたアリアドネは、一人置き去りにされたことを知ると、悲しみのあまり身を投げて死のうと
しました。そこに酒の神ディオニュソスが現れ、悲しむ彼女を慰め、自分の妻に迎えたのです。
このとき、結婚の記念にと、ディオニュソスが彼女に贈った冠が、やがて星空に上げられ、
このかんむり座になったと言うことです。
春から夏の頃、星のよく見えるところに行く機会がありましたら、この冠を探してみてください。
では、今回の星物語はここまでです。
著:Shiba
(c)さいたまプラネタリウムクリエイト 2023