「いるか座の物語」
2023年6月30日22時頃の南東のさいたま市の星空
2023年の6月末の南の夜空には月齢12.3の月がさそり座にあります。
今回は「いるか座」の物語をご紹介します。
いるか座はわし座の1等星アルタイル、つまり七夕の星、彦星の東にある小さな星座です。
4つの星が菱形を作っていて、日本では菱星と呼ばれてきました。いるか座ではここがイルカの頭、
そこからさらに1つの星が南に延びて、そこがイルカの身体部分になっています。
このいるか座についてはいくつかの物語がありますが、本日は、音楽家アリオンを助けたイルカの物語を
ご紹介します。
アリオンはコリントスの王様に仕えていた音楽師で、竪琴の名手でした。ある日、アリオンはシチリア島で
開かれた音楽祭に出場しました。彼の演奏は人々を魅了し、アリオンは見事に優勝。今まで以上の名声に加えて、
たくさんの賞金と賞品を手に入れました。
やがて祝いの宴も終わり、コリントスへと戻るために、アリオンは一隻の船に乗り込み、船は港を出て
沖へと向かいました。が、船が沖に出ると、船乗りたちはアリオンに剣を向け、賞金の入った袋を奪い、
アリオンには、海に飛び込めというのです。アリオンは助からぬ命だと悟ると、立派な音楽家らしく死のう、
と覚悟を決め、最期の望みとして、ただ一曲だけでいいから竪琴を弾きたいと申し出ました。
海賊と化した船乗りたちですが、アリオンの覚悟を決めた様子に、1曲だけだぞ、としながらも、
この願いを聞き入れました。
アリオンは、紫の衣を身に着け、頭に花輪をいただいて、船縁に立ち、これが最期と心を込めて竪琴を
演奏し始めました。すると、たくさんのイルカたちが船の周りに集まってきたのです。
しかし、やがては曲も終わり、アリオンはいさぎよく海に身を投げました。すると、1頭のイルカが
アリオンを救い上げ、背中に乗せて泳ぎだしました。イルカたちはアリオンをコリントスの港まで運び、
アリオンは無事、王宮に戻ることができました。
一方で、やがてコリントスの港に帰ってきた船長と水夫たちは、王様の命令で取り押さえられ、
厳しい罰を受けました。
この様子を眺めていた神々が、アリオンを助けた功績を認め、イルカたちを夜空に上げているか座にした、と言うことです。
イルカは賢く、音にも敏感だと言われます。ですから、本当にこのような出来事があったのかもしれませんね。
では、今回の星物語はここまでです。
著:Shiba
(c)さいたまプラネタリウムクリエイト 2023