おおぐま座とこぐま座の物語
2024年5月15日20時頃のさいたま市の北の星空
2024年の5月15日の夜空には,上弦の月が輝いています。
今日は、「おおぐま座・こぐま座の物語」をご紹介します。
この時期、北斗七星が空高くにあって、とても見つけやすくなっています。
北斗七星は柄杓の形をした星の並び。その柄杓の桶の先端の2つの星の長さを5倍した先に、
北極星を見つけることができます。そして、この北極星を柄の先にして、ここにも、
小さな柄杓の形の星の並びがあります。大きな柄杓と小さな柄杓。
北斗七星は、日本では柄杓星と呼ばれてこれだけで1つの星座ですが、国際的にはこれは、
おおぐま座の一部分、大熊の背中からしっぽです。なので、小さな柄杓は、北極星をしっぽの
先にした小熊の姿だ、と考えられました。
そして語り継がれてきたのが、本日ご紹介する「おおぐま座・こぐま座の物語」です。
でも、よく見てみると、大熊も小熊もそのしっぽはまるで狐のしっぽのように長くて、
熊のしっぽらしくない・・・のですが、そのわけも物語の中で語られています。
では、物語をご紹介しましょう。
昔、月と狩りの女神に使える狩人の妖精たちの中に、カリストという、それはきれいな
娘がいました。彼女は、一番偉い神様のゼウスに愛され、男の子が生まれました。
これに怒った、ゼウスのお妃さまのヘラは、カリストを捕まえて言いました。
「醜い、恐ろしい熊になって、野山をさまよって暮らせ!。」と。
カリストはヘラの前に跪いて頼みました。「私には生まれたばかりの子供がいます。
お願いだから熊にしないで・・。」 けれど、カリストの言葉は半分しか聞こえませんでした。
白かった腕も、地面についていた膝も、みるみる毛だらけの熊の手足になり、声も熊の吠え声になりました。
カリストは、熊の姿になっても心は妖精のままでした。子供のことが心配でなりません。
「どうか私をもとの姿に戻してください。」カリストは泣きながら野山を歩きました。
何年もが過ぎて、アルカスと名付けられた、カリストの子供は大きくなりました。
ある日アルカスは狩りに出かけました。すると目の前に年を取った大きな熊が現れました。
カリストでした。
カリストは一目見ただけで、アルカスが自分の子供だとわかりました。
カリストは自分が熊にされていることも、自分の声が熊の吠え声になっていることも忘れて、
アルカスに呼びかけました。「ああ、私の息子。もっとそばに来て顔を見せて。」言いながらカリストは
アルカスに近づきました。
アルカスは立ちすくんでしまいました。大きな熊がうなりながら近づいてくるのです。
アルカスは、その熊がお母さんだとは知らないのです。「私はおまえのお母さんよ。」
そう言いながらカリストはアルカスを抱きしめようとしました。
熊が襲いかかってくると思ったアルカスは、槍を振り上げ熊の心臓をねらいました。
そのとき、「アルカス、おまえが殺そうとしているのは、おまえの母上なのだよ。」と
ゼウスの声が森に響きました。
アルカスははっとして熊を見ました。熊の目には母の愛と涙があふれていました。
「ゼウス様。お母さんが人間に戻れないのなら、どうか僕も熊にしてください。僕は、お母さんと
一緒に暮らしたい。」アルカスは叫びました。
ゼウスはアルカスの願いを聞き入れ、アルカスも熊にして、二匹の熊を天高くに投げ上げ、星座にしました。
このときゼウスが、大熊、子熊のしっぽをつかんで、びゅーん、びゅーんと天に投げ上げたために、
2匹のしっぽが長く伸びてしまったのだと言うことです。
本日の星物語のご紹介はここまでです。良く晴れた夜には空を見上げて、この物語を思い浮かべながら、
おおぐま座・こぐま座を探してみてください。
著:Shiba
(c)さいたまプラネタリウムクリエイト 2024