はくちょう座の物語 ゼウスのお話
2025年7月1日0時頃のさいたま市の南の星空
南十字星サザンクロスに対して、ノーザンクロス、つまり北の十字星と呼ばれるのがはくちょう座です。
はくちょう座は天の川の上を飛ぶ白鳥。本日はこの「はくちょう座の物語」をご紹介します。
はくちょう座には、この白鳥は、太陽神アポロンの息子ファエトンの親友のキグヌスだという物語もあります。
が、本日ご紹介する「はくちょう座の物語」は、この白鳥は大神ゼウスが変身した姿だという物語です。
では、物語をご紹介しましょう。
スパルタの王様テュンダレオスの妃レダは、それはもう大変な美人でした。大神ゼウスは、
この王妃レダが気に入って近づこうとするのですが、レダはゼウスを避けていました。
そこでゼウスは愛と美の女神アフロディテに手伝ってもらい、白鳥に化けたゼウスが、
アフロディテが化けた鷲に追いかけられる、というふりをして、レダの膝元に逃げこんだのです。
レダは白鳥を哀れに思い、これを抱き寄せ、かくまってやりました。
その後レダは2つの卵を産み、1つの卵からは双子の兄弟カストルとポルックスが、もう1つの卵からは、
双子の姉妹クリュタイムネストラとヘレネが生まれました。
このうち、カストルとクリュタイムネストラはレダの夫であるテュンダレオス王の子、
ポルックスとヘレネは大神ゼウスの子でしたが、テュンダレス王はもちろん、そんなことは知りません。
ヘレネは成長すると、並ぶ者なき美女、まさに絶世の美女となり、ギリシア中から、王や王子たちが
彼女との結婚を求めてやってきました。父であるテュンダレオス王は、彼らの中の誰を結婚相手に選んでも、
それ以外の男たちの恨みを買う恐れがあるため、あらかじめ、「誰が彼女の夫に選ばれるにしても、
彼女の夫となった者が危害を加えられたときには、全員が彼を助ける」という約束をさせ、彼らの中から
メネラオスを選びました。
4人兄弟のうち、カストルとポルックスは天に上り、クリュタイムネストらはミケーネの王アガメムノンの
妃となったため、メネラオスがスパルタ王に、ヘレネは王妃になりました。ある年トロヤの王子パリスが
スパルタに来て、王妃ヘレネと恋に落ち、ヘレネを奪って逃げました。
メネラオス王は、ヘレネを取り戻すべく、かつての妻の求婚者たちを集め、トロヤを攻めました。
これがトロヤ戦争です。あの有名な木馬を使ったギリシア軍によって、難攻不落の城壁が破られトロヤの砦が
焼け落ちるまで、このギリシアとトロヤの戦いは10年間も続きました。
さて、「はくちょう座の物語」はここまで。この物語でははくちょう座は、ゼウスがスパルタの王妃レダに
会うために化けた白鳥の姿とされています。
夏の夜空で1番明るく輝く恒星はこと座の1等星ベガ、織り姫星です。そして天の川を挟んでその南東に、
わし座の1等星アルタイル、彦星があります。このふたつの星と三角形を作るところに、やや暗めの1等星、
デネブがあります。デネブとは「しっぽ」という意味。はくちょう座の1等星デネブは、天の川の上を飛ぶ
白鳥のしっぽの星です。そしてこの3つの1等星が作る三角形を、夏の大三角と言います。
夏の夜空に七夕の星を探すときには、夏の大三角の残るもう1つの星デネブから、
北十字星とも呼ばれるはくちょう座の姿も探してみてください。
はくちょうの嘴にある星アルビレオは、トパーズとサファイアにもたとえられる、大変に美しい二重星で、
宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」にも登場していますよ。
では今日の星物語のご紹介はここまでです。
著:Shiba
(c)さいたまプラネタリウムクリエイト 2025
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