ぎょしゃ座とぎょしゃ座のα星カペラの物語
2025年12月16日23時30分頃のさいたま市の南の星空
晴れ渡り澄み切った冬の夜空は豪華です。明るく輝く恒星、すなわち1等星は、全天に21個ありますが、
日本で見られるのはそのうちの15個ほど。冬の夜空では何と、その約半分、7つの1等星を見ることが
出来るのです。
冬の夜空で最も見つけやすい星座は、2つの1等星と5つの2等星を持つオリオン座。そのオリオンの右肩の1等星ベテルギウスのまわりに、残る6つの1等星が六角形を描くように並んで輝いていて、これは冬のダイヤモンドと呼ばれたりしています。
その6つの1等星。まずは、オリオンのベルトである3つ並んだ2等星の東に、一際明るい1等星、おおいぬ座のシリウスがあります。そしてそのシリウスとベテルギウスで三角形を作るところに、こいぬ座のプロキオン、その先に二つ並んだ明るい星があり、その左側の方が、ふたご座の1等星ポルックス、オリオンの頭上にはぎょしゃ座のカペラ、そしてオリオンの伸ばした腕の先に、おうし座のアルデバラン、そして最後に、オリオン座のもう1つの1等星、オリオンの左足先の1等星リゲルです。
それらの1等星を持つ、それぞれの星座には、さまざまな星物語がありますが、今日はそのうちの、「ぎょしゃ座とぎょしゃ座のα星カペラの物語」をご紹介します。
ぎょしゃ座は五角形の、将棋の駒のような形をした星座で、山羊を抱いた老人の姿。その抱かれた山羊のところで黄色く輝く1等星がカペラです。
この、山羊を抱いた老人については、アテネの王、エレクトニウスだとか、アテネの王テセウスとアマゾン族の女王との息子であるヒッポリュトスだなど、いくつかの説がありますが、今日はそのうちの、この老人はアテネの王様エレクトニウスだ、とする物語をご紹介します。
この王様は大変に聡明で、良い政治を行ったので、人々から慕われていました。が、彼は、生まれつき足が不自由で、歩くことさえ出来ませんでした。それでも、戦となると、馬に身体を縛り付けて、戦闘に参加するという、武勇にも優れた王様でした。やがて彼は、その知識と工夫の才能を活かして、自由に動き回れるようにと車椅子のようなものを作り出し、さらにそれを、馬に引かせる、工夫を凝らした車いすのようなものへと作り上げ、それを自由自在に操って、勇ましく戦場を駆け巡り、戦場でも大活躍して、兵士達を驚かせました。その英知と勇気、そして戦場での数々の功績がたたえられ、彼はぎょしゃ座となって夜空に上がったと伝えられています。
これがぎょしゃ座の物語、もう1つ、次はぎょしゃ座の1等星カペラをご紹介します。
ぎょしゃ座のα星、黄色いカペラは、ぎょしゃ座の五角形の右上の角で輝く、全天で6番目に明るい1等星ですが、そのカペラというのは、「小さな雌山羊」と言う意味で、ぎょしゃ座の、この老人が抱いたヤギのところで輝いています。
この人物がなぜヤギを抱いているのかは伝わっていませんが、ギリシア神話では、ゼウスが赤ちゃんだった頃、ゼウスの父であるクロノスが、次々と子供達を飲み込んでいく中、ゼウスは乳母に助けられ、山奥に逃れて、そこで山羊の乳で育てられたと言われていて、このヤギが、大神ゼウスを、その乳で育てたヤギだと言うことです。
さて、では星物語のご紹介はここまで。冬の夜空にオリオン座や冬のダイヤモンドを見つけましたら、将棋の駒のような姿のぎょしゃ座を探し、その老人とその老人に抱かれた雌山羊の物語を思い起こしてください。
著:Shiba
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